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ギフテッド教育関連書籍「比較教育学研究 第45号 特集:各国の才能教育事情」レビュー

公開日: : 書籍

比較教育学研究 第45号 特集:各国の才能教育事情
比較教育学研究 第45号 特集:各国の才能教育事情

比較教育学研究 第45号 特集:各国の才能教育事情

 各国のギフテッド教育の歴史、現状がまとめられた書籍です。発達・教育心理学ではなく教育制度についてなので、ギフテッド児の保護者さん向けではないかもしれません。ですがギフテッド教育についてより深く関わっていきたいという方にはオススメの良書です。

 ギフテッド教育といってもその内容は国によって様々です。社会制度と教育思想、現状と課題がかなり分かりやすく説明されています。日本のギフテッド教育の未来を考える足がかりになると思います。
以下に目次、概要、レビューを書いていきます。

才能教育について(概説)ー日本における状況ー

 日本におけるギフテッド教育の歴史、現状(飛び級、スーパーサイエンスハイスクール)、課題。ギフテッド教育の方法(早習、拡充)、ギフテッドとタレンテッドの違い。などの基本的な事項が書かれています。

 特に日本のギフテッド教育の歴史は興味深かったです。「日本にギフテッド教育が存在しない!」という見方もありますが、ギフテッド教育と同等の政策や民間での活動は多少あったようです。ギフテッド教育が広まらない原因として「エリート教育批判への警戒」が挙げられています。日本政府がギフテッド教育に無関心と言うよりは、「教育機械の均等」についての論争が根本にあるようです。

シンガポールの才能教育事情

 シンガポールでは優秀な人材確保の必要性に迫られ、国策としてギフテッド教育が行われているそうです。教育省には才能教育局が設置され、才能教育に特化した教員養成などの関連制度も充実しているそう。早習よりも拡充がメインということでした。

 注目すべきなのは日本で言うゆとり教育とギフテッド教育が組み合わさっている点。詰め込み教育を避け、空いた時間をより深い学びの為に使っています。また教育制度を整備し、通常児童に対しても個性に合わせた教育を施そうという姿勢が素晴らしい。とてもバランスの良い教育政策を行っていると感じました。

韓国の才能教育事情

 韓国では教育政策としてギフテッド児の為の学校が設置されているそう。一方でそれが名門校となり受験戦争の加熱にも繋がり、様々な対策がとられているとのこと。

 韓国は日本に近いお国柄でもあり学ぶべきことは多そうです。教育の公平性、社会的地位の再生産への批判がなされていると言います。韓国と言えば熾烈な受験戦争が有名です。もしかしたら生得的能力よりも後天的な努力によってギフテッド教育に手が届いてしまう状況なのかもしれません。努力と才能の相互関係について深く考えさせられます。

文革後中国での才能教育の展開

 中国でもやはり教育の公正分配が課題となっており国策としてはギフテッド教育に関する明確な根拠を持っていない。しかし飛び級児童の割合は高めで早習型のギフテッド教育が見られるという。

 中国も大学受験戦争が熾烈で、拡充よりも早習のニーズが高いようです。シンガポールとは対称的ですね。そしてタレンテッド教育も活発なのは注目すべき点だと思います。

イギリスにおける才能教育

 イギリスでは明確に教育政策としてギフテッド教育が実施されています。さすがにギフテッドのサポート体制は整っているようです。また通常教育課程に付属する形でギフテッド教育を導入した事により、社会にスムーズに受け入れられたといいます。そしてギフテッド教育によって学校全体の教育水準も上昇しているそう。

 本書で指摘のある通り、エリート教育への警戒が強い日本がイギリスから学ぶ事は多いと思います。イギリスではバランス良くギフテッド教育を取り入れているように感じました。

アメリカの才能児・生徒教育

 アメリカでは広くギフテッド教育が実施されているのはご存じの通りです。また知能の定義についても紆余曲折があり、ギフテッド教育に影響を与えています。ギフテッド教育や知能の研究についての歴史的な流れなどが書かれています。

 この項に関しては他の項に比べてまとまりが良くない印象を受けました。文章も少し抽象的、明確さに欠けます。p.91には文字化けもあります。参考文献の数も少なくオススメの論文とは言いづらいです。アメリカのギフテッド教育に関してはそれ単体で書籍が発売されているので、そちらをオススメします。
アメリカの才能教育―多様な学習ニーズに応える特別支援

南アフリカ共和国における才能教育にみる効率性と公正性の課題

 通常教育の普及率も発展途上の南アフリカ共和国のギフテッド教育事情です。その分、教育に関する根本的な問題が浮き彫りになっており大変興味深いです。ギフテッド教育よりも通常教育の普及が当然優先されます。教育の機会平等性がとてもセンシティブな問題として扱われています。一方で優秀なリーダー、才能の優れた者の存在も求められています。

 これは教育そのものについて幅広い示唆を含んでいるように感じます。先進国の事例ばかり見ていると視野が固定されてしまいがちです。たまに発展途上の教育文化について考えると視野が広がる気がします。その他白人と黒人の社会的格差、個人主義と社会主義、西欧文化と民族文化の違いなども興味深いです。

ギフテッド教育について勉強するスタートとして最適

 内容も難しくなく全体として大変分かりやすい本です。ここから興味のある国、あるいは良いと思った教育政策に関して調べをスタートさせると良いでしょう。参考文献も多く記載されているので情報を辿りやすいです。
 これを読んで教育政策よりもギフテッドの特徴や育て方を知りたいと感じた方は教育心理学方面の書籍を探すと良いと思います。ですがギフテッドに関わる人ならば、これ1冊持っておいても損はないと思います。

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